高齢のためにもうご自身でお参りに行くこともできない、あるいはご自身の次にお墓を承継する方がいない、身内はいるけどその人に後のことをお願いしていいものか、子どもたちを煩わせたくないから今のうちに……といった事情やお考えでご相談をされる方が増えています。「これまでせっかく先祖が守り続けてきたのに……」といった、自責の念も重なって、深刻に悩まれている方もいらっしゃいます。
こうした場合によく挙げられるのが、いわゆる「墓じまい」と言われるものです。
これはすでに広く知られていることですが、ご遺骨を今のお墓から他の埋葬施設(永代供養墓など)にお移しして(改葬)、お墓(墓石)は撤去し、文字どおり「しまう」ことです。
いわゆる「無縁墓」となって埋葬されている方(御霊=みたま)が寂しい思いをしないように、という思いから、この方法をお考えになる方は少なくありません。悩まれているご本人にとっても、御霊にとっても「安心」を得られる、という点で、有効な手立てです。
しかし、一方で十分に留意しておくべきこともあり、「安心」のはずが「後悔」に変わった、というケースもうかがっていますので、ご注意ください。
無量寿寺では永代供養墓「無量寿塔」をご用意し、最大限、皆様のご要望に沿うようにいたしておりますが、下記の点については十分にご説明し、ご理解・ご納得をいただくようにして務めております。
[ご留意いただきたいこと]
まず、お墓とは、ご遺骨を埋葬するための、いわば「遺骨の処理の場」であると同時に、ご縁のあった方々が故人に対し感謝や供養といったさまざまな思いを届けることができる、また、故人からの思いを感じ取ることができる「心を通わせる場」である、ということを念頭においてください。
❶もし「墓じまい」をした場合に、それを強く惜しみ、悲しみを募らせる方はいらっしゃいませんか?
❷ご家族(あるいはご身内)と十分にご相談をされ、そのうえで相互に理解が得られていますか?
❸ご縁の深いご親戚などへの事前の周知はお考えですか?
とくに、「あとあと、子どもに迷惑がかかるから」と心配のあまり、今あるお墓は閉じてしまい、自分たち(親)は永代供養墓への埋葬でも樹木葬でもしてくれればいい、といったお考えをされる方がいらっしゃいますが、お子さまも同様のお考えかどうか、よくお話し合いください。
親として「よかれ」と考えることでも、お子さまにとっても必ずしもそうとは言い切れません。おじいさまやおばあさまも埋葬されているお墓を閉じてしまったことで「心を通わせる場」を失い、親御さんも永代供養墓に埋葬せざるを得なくなり、精神的支えがなくなり深い悲しみのもとになってしまった、というケースも聞かれます。「迷惑なはずないでしょ、親が入っているお墓を守るのは当然なんじゃない?」とお考えのお子さんも多くいらっしゃるのが、現実です。
大切な「回想」の場でもあるお墓を、「よかれ」との思いから行った「改葬(墓じまい)」が家族の「改争」や「悔葬」になっては大変です。家族どうし、親戚どうしのつながりが希薄化していると指摘されている今の時代だからこそ、お墓の持つ意味は少なくないと思うのです。
「決定」なさる前に、ぜひ、ご相談ください。できる限りよい方策をご一緒に考えましょう。